先生と王子様と演劇部な私。

「緊張なんてしなかったな。さぁ俺を見ろ、の勢いだった」


 まじっすか。さすが、主役ばかりの人は違うと言うことか。


「だけど、一度だけ凄く緊張した。……泣きそうなくらいな」


 朗先生が泣きそうなくらいだなんて、信じられないかも……。でも、先生はその時を思い出しているのか、唇を噛み締めている。


「どうやって乗り切ったんですか?」

「気合いだよ。始まれば慣れる」

「慣れる前に出番が終わるんですけど……」


 恨みがましく朗先生を見上げると、あはは、と先生が楽しそうに笑った。ヒドイ。

 せっかく朗先生と二人で話しているのに緊張で楽しめないし、最悪だ。


「客が入ったら凄いぜ? どこを見ても、客が目にはいる。その客たちは自分を見てるんだ」


 朗先生が両手を広げ、意地悪そうに微笑んだ。