「さて、朗先生が怖いから、俺は帰るよ。じゃぁね柚子ちゃん」


 堀木戸さんは部屋の一角に衣装を丁寧に置くと、教室から出て行ってしまった。




 ……朗先生と久しぶりに二人きりだ。でも先生はさっきからずっと不機嫌そう。



「あ、朗先生どうしてここに……?」


「随分と楽しそうだったな」


 朗先生はジーッと私の目を見つめる。

 楽しそうって……どこから見てたらそう見えたんだろう?


「そ、そうですか?」

「平と話せてそんなに楽しい?」

 朗先生が少し顔を上げて、眼鏡の下から見下ろしてきた。そんなことをしなくても、普段から見下ろされる身長差だけど。

「えっと?」



 何か……それ、本当にヤキモチみたいですよ? そう思った瞬間に山野の顔が思い出されて、パッと目を逸らした。




「……石川先生が帰って来ないって怒っている」


「げ! 忘れてた!」