「趣味なの?」

『さあアリス、きみには期待してるんだよ。』

まだ言い続けるアリスを華麗に無視して少年が言った。




彼はふわりと紫色の髪をなびかせて軽く後ろにジャンプした。
そしてそのまま姿が消えてしまった。




『僕はチシャ猫。
夢の中を生きる、
自分勝手な世界の傍観者…

期待してるよ、きみがこの世界を面白くしてくれると』




チシャ猫の笑い声は遠くなり、ついに聞こえなくなってしまった。





ぽつん、と残されたアリス。


「おもしろく…え?」


なんのことよ。

“この世界”ってこの不思議な世界のこと?



黒と白しかないこの空間。
同じ壁、同じ色。
どこから着たのかさえ、右か左さえ分からなくなってしまう。




赤い扉が目に入った。


さっきウサギが入っていった扉。






ごく…



唇を引き結んだ。