ゆるく握られた右手はやっぱり簡単に振り払うことができた。




それでも力いっぱい振り払ったのは、ただの意地とプライド。



ざまぁみろと思っていても、創平の顔を見ることができなかったのは、創平がどんな顔をしているのか見たくなかったから。



きっとなんでもないような顔をしてるのが、見たくなかった。




「友達?クラスメイト?結局さぁ、一緒にいて気使わなくて楽なだーって思ってるってことでしょ?そんな相手そこらじゅうにいるし、俺とお前の仲みたいな、なんか特別っぽい言い方しないでくれる?」




創平の顔はまだ見れない。


口から勝手に言葉が出てくる感覚をはじめて体験していた。


考えるよりも前に口に出していて、止められない。




「なんだよその言い方。そこらじゅうにいねぇよ。あかりのこと好きだつったろ」


「それもやめて。聞きたくない。わかんないんだよ」



創平の口から好きだ、と。


伝えられる相手がどれほど自分だけに向けられるものであればいいと願ったか。


そんなちっぽけな願いほど口に出して言えない。
だってあたしは、創平のことを友達だとは思えないから。



好きなんだよ。
あの日から変わらずずっと。


好きな相手から向けられる、友達としての“好き”がこれほどつらいものだなんて思っても見なかった。