「さっきだってなんで逃げたんだよ。なんか買いに来たんじゃねぇの？」




握られた右手はさほど強い力で掴まれてはいないのに、振り払ってしまえない自分がほんとうに嫌になる。



適当に言い訳をしてしまおうかと唇を震わせようとしても、なにが正解なのかわからなくて言葉が出てくることなく開いた口をまた閉じた。



そんなあたしを見ていた創平は、口ごもるあたしに何を思ったのか、握った右手をさらに強めた。






「ほら、言ってみ。俺とあかりの仲じゃん」





さっきよりもトーンが上げられた声。


あぁ、でたよ。
創平の無自覚にこっちを正気に戻させる台詞。


あたしの右手をつかむ創平の手はやけにあつくて、でもそれに反比例するようにあたしの右手は冷めていく感覚がした。

創平に背を向けた状態から、向き直るように体制を変える。


そこにはやっぱりいつものように笑う創平がいて、



あぁ、もう知らない。

創平があたしにどんな関係を望んでいたとしても、


もう遠慮なんかしてやらない。






「あたしとあんたの仲ってなによ？」





思っていたよりも、ずっと探るような低い声が出た。