湿気で濡れた廊下は、足を踏み出すたびにキュッキュッと音を立てている。
さっきはあれほど、通りにくかった階段を俯いたまま駆け上がった。
教室に着くと、音を立てて扉を閉めてその場にしゃがむ。
「はぁ、はぁ、」
弾む息の理由は日頃の運動不足だけではなかった。
なぜあたしがさっき身を潜めたのか。
理由なんてとっくにわかりきっていた。
聞こえた会話は親しげで、どこか聞き覚えのあるものだったから。
あの会話は、まるであたしと創平だ。
軽口たたきあって、喧嘩腰の会話。
乃亜が、創平の気持ちを予想したきっかけでもある会話によく似ていた。
なにが特別。なんの思い上がりだ。
特別なんて、ありもしなかった。
なにが、
『愛してんぜまいちゃん!』
「ばかみたい…」

