* *
「雨だ」
窓をたたく雨の音が、あたしの意識を外へと集中させた。
まだ本降りではなさそうだけど、これから強くなっていくんだろうか。
教室の時計を見上げると、勉強を始めて40分。
思ったより時間は進んでいて、そのわりには進んでいないテキストを見てまたため息が出た。
「とりあえず、にーちゃんに連絡いれとくか」
ポケットから携帯をとりだして、二番目の兄の番号を探す。
メールだと絶対にすぐに見てくれないし、もしかしたらメールに気づかないなんてことも大いにありえる。
見つけた番号に電話を鳴らし、待つこと数コール。
「あ、もししもし?あかりだけど。おにー今家でしょ。学校まで車で迎えに来て」
「ぅうん?なんて?」
やっと出たと思ったら、声が思いっきり寝起きだった。
電話してよかった。
「迎えに来て。学校」
「はぁ?なんでまだ学校いんの?何時よ今?」
「いーから。迎えに着てよ。雨降ってんの。傘もないの」
「はーもうざけんな」
いやがるにーちゃんを説得して、一時間後に来てもらう約束をした。
電話ですっかり集中力の切れたあたしは、飲み物を買いに1階の自販機まで向かうことにした。
小銭だけ握り締めて廊下を進む。
どこからか、吹奏楽部の楽器の音が聞こえていた。

