何かをあたしに言いかけていた創平は、そのまま続きを口にすることなく一言じゃあなと言って教室から出て行った。
いつのまにか教室には人はいなくなっていてさっきまでの騒がしさがうそみたいだなんて思った。
創平は何を言おうとしてたのかな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、シャーペンの芯をカチカチと出して英語のテキストへと意識を集中させていく。
なにかあるたび、創平には気持ちをゆさぶられいつまでたっても飽きさせてくれない。
どうしてあの日、あたしを抱きしめたの?
どうしてあの時、あんなこと言ったの?
どうして今でも、あたしに何の答えもくれないの?
あの日のことは今でも鮮明に頭の片隅には残っていて、自問自答を繰り返している。
今日こそは、創平にあの日のことを聞こう。そう思っていても、顔をくしゃくしゃにして笑う姿を見ていたら今の関係を壊したくなくて決心は一瞬で壊れてしまう。
つい力がこもった指先が、シャーペンの芯を折る。
大きなため息は、1人の教室には大げさすぎるくらい大きく響いていた。

