帰る準備を進めていると、あ。という乃亜の声が聞こえた。
視線だけを乃亜へむけると、乃亜は窓を見つめていた。
同じように窓へと視線を移すと、外はいつの間にか薄暗くなっており、今にも雨が降り出しそうだった。
「雨降りそう」
「えー傘持ってきてないよー」
今朝はいつも見る天気予報を見てこなかった。
ミスだ。と今にも降り出しそうな空を見つめて思った。
こんな時に限ってカバンの中に降りたたみの傘はなく、無意識にため息が出る。
「あかりどーするの?あたし傘持ってきてるから、今日はいっしょに帰る?」
しっかり天気予報を確認してきていた乃亜。
追試の勉強をしていなかった先週まではいつもいっしょに帰っていたから、ついでに入れてくれるようだった。
「んんんんん〜…」
濡れたくないし、とてつもなく嬉しい話だけど追試は明日だ。
このまま家に帰ってしまえば、絶対だらけて勉強なんてできない。
嫌いな教科だ。
家に帰れば理由をつけてサボる自分が想像できる。
だめだな。絶対家じゃできない。
「ほんとありがたいし、帰りたいけど、やっぱちょっと学校で勉強してくね」
顔の前で手を合わせ、乃亜に頭を下げた。
「ほんとに大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!もし降ってきても、今日は家ににーちゃんがいるはずだから迎えに来てもらうよ」

