僕は空を見ていた。




……何で??


僕は仰向けでオープンカフェの床に転がっていた。

起き上がろうすると、頭がクラクラする。

…何でこんな事に?


カフェの店員や、通りを行く人達が、怪訝そうに僕を見てくる。

『つっ…いってぇ〜何だこれ?あご痛っ…』

手をついてゆっくり起き上がろうとした時…


バッシャーン!!




?!?!?!?!?!


今度は水をぶっかけられた。


……ちょっと待て!!


『つっ…おいっ何すんだよ、未紅!!』

『はぁあ?「何だよ?」はこっちの台詞よ。
 何すんのよっ馬鹿ハルっ』


自分より凄い剣幕の未紅。

こんな彼女には決して頭が上がらない。


『……ごめん…』


思わず謝ってしまった、不本意ながら。


『ひどくない?ねぇひどくない?
 失恋したばっかのわたしに、こんな冗談
 ひど過ぎだから!』

『ちょっと、未紅!冗談って何だよ。
 オレ、冗談でキスなんか…』


水を滴らせながら、必死な自分。

けど、彼女は頭を抱えて、僕の言葉なんて聞こえてない様子。


『も〜ヤだ〜ハルがこんな奴だなんて
 思わなかった!最悪!帰る!!』

ズンズンズン。

そんな風に聞こえそうな足どりで、店を出て行く彼女。

『まっ待てよ、未紅っ』

追い掛けようと、急いで立ち上がるが、まだ頭はクラクラするし、水はボトボト垂れてくる。


未紅のヤツ〜!

普通、殴らないだろう、グーで、それもアッパーで。




…僕は彼女にキスをした。

座っていて、少し上を見上げた彼女の唇に、そっと上から重ねる感じで…

そしたら、胸倉つかまれたと思った瞬間、握りこぶしを下からガツ〜ン!といかれてしまいましたよ…


その上、グラスの水までかけられてしまった。


『痛すぎだし…』


あごを押さえる自分が情けない。


周りを見ると、みんな小馬鹿にした感じで自分を見て笑う人達ばかり。

自分も出て行こうと急ぐが、出口で支払いを求められて店員にとめられてしまった。