元々動物といったらモルモットぐらいしか扱ったことのない研究者。
麻薬の量を間違えるという初歩的なミス。
そして、若い猫がどれほどの身体能力を持ち、どれほどの素早い動きをしているのか、計算できなかったのだ。
一瞬の隙を突いて逃げ出す灰猫。
棚という棚、机という机を飛び回り、研究室は荒れに荒れた。
元々ウィルスの研究をしていた施設。
猫が暴れ、ウィルスが散布しては死ぬのは猫ではなく我々人間のほう。
それが焦りを生んだ。
開く研究室の扉。
そのすきをエルシャンクは見逃さなかった。
「まて!」
声を張り上げたところで、猫に人語は分からない。
恐るべきスピードで部屋から飛び出すと、あっという間にエルシャンクは基地から逃げ出したのであった。
こうして、世界の命運を握る猫が世界に飛び出たのである。


