ネモ的、SFファンタジー短編集


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・。」


 菜々は焦っていた。


 突然だった。


 白い男が集団で現れたかと思うと、いきなりエルシャンクをよこせと言ってきたのだ。


 あの日から毎日、自分のところに遊びに来てくれていたエルシャンク。


 手を差し伸べると近寄って、頭をなでるとゴロニャンと鳴いて、魚をあげると美味しそうにむさぼっていたエルシャンクが、その男たちを見た瞬間、全身の毛を逆立て威嚇を始めた。


 ・・・・・・・・こいつらは危ない大人だ・・・。


 直感が告げていた。


 だから、菜々はエルシャンクを抱え走り出した。


 どこに向かっていいのか分からない。


 男たちは追ってくる。


 子供の足ではすぐに追いつかれるから、細い路地や、狭い空間、入り組んだ道筋を利用して逃げてみるが、やっぱり大人の足ではすぐに追いつかれてしまう。


 どうしよう・・・・・・どうしよう・・・・・・。


「・・・・・どうしよう・・・。」


 不安が声になって出た。


 そういえば、まだ仕事中だった。


 早く店に戻らないと、またオジサンに殴られる。


 もう殴られるのはイヤだ。


 でもご飯が食べられなくなるのはもっとイヤだ。


 戻らなくちゃ・・・でもエルシャンクも守らないと・・・。


 どうしよう・・・どうしよう・・・。