ネモ的、SFファンタジー短編集


「まぁ、取らぬ狸の皮算用ってヤツだからね・・・。そんなこと考えても無駄なんだろうけどさ。」


 歩きながら、大きく背伸びをするキラ。


 彼女を見てると、ふと考えてしまう。


 半年前、虎神は悪魔とも言うべき、『人工知能』という兵器を作り出した。


 パイロットを必要とせず、ただのプログラミングによって破壊を繰り返すだけの、悪魔のようなギア・ドールを・・・。


 しかし、彼らはあくまで現代の戦争の形である『ギア・ドール戦』というものにこだわった。


 当たり前だ。


 ミサイルも核も、当然、細菌兵器も毒ガスも、すべて自国に影響が出てしまっては、問題外だ。


 勝つ以上は、自分も敵もできるだけ無傷で勝利を得たい。


 だが、アトランテはそのルールすら破った。


 自国さえ残ればあとはかまわない。


 自分たちさえ生き残ることさえできれば、後は誰が死のうとかまわない。


 狂気が・・・コノ世界を取り巻こうとしている。


 誰かが・・・止めなければいけない。


『私はコノ世界に何の期待もしていない・・・だけど、もし世界を変えられるものがいるとしたら、お前のような男だと信じているよ』・・・。


 半年前に大嫌いだった女から言われた言葉。


 無茶を言うな・・・エリアス・・・


 俺にそんな力はない・・・。