「あれ?」


 主人に命令されて、店の裏にゴミを捨てに行った瞬間、菜々の目に見慣れぬものが映った。


 にゃ~


 可愛らしい声で鳴く、その物体は・・・・一匹の灰猫・・・・・・。


 首輪をつけているあたり誰かの飼い猫だろうか?


「おいで、おいで・・・。」


 どちらにしても、灰猫の可愛いオーラに10歳の幼い心が勝てるわけが無い。


 菜々はゴミを捨てるとしゃがみこんで右手を差し出す。


「おいで、おいで・・・。」


 にゃ~


 再び、可愛らしい声をあげてこちらに近づく灰猫。


 人懐っこい。


 やっぱり、誰かに飼われているのだろう・・・。


「よし・・・いい子。」


 自分の手元まで来ると、菜々は猫を抱き上げ、その可愛らしい頭をなでる。


 毛がふさふさして気持ちがいい。


「そういえば、ゴミの中に魚のカスが・・・。」


 すかさず、先ほど出したゴミ袋の中から魚を見つけると灰猫に与える菜々。


 猫は一目散にそれに飛びつく。