「・・・ありがとうございます。ミク様。」


「何言ってるの?私は死神だよ。どこにでもいる、ただ、死をつかさどるだけのね。」


 ・・・・・・・それでも・・・・・。


「ありがとうございます。」


 再びお礼を口にした。


「・・・・・・・・どういたしまして。」


 それに対して笑顔で答えるミク様。そして、言葉を続ける。


「まぁ、世界を生きるっていうのは、いつの世もどこの国も大変さ。笑っていれば幸せとは限らない、泣いていれば不幸とは限らない。だけど・・・それでも、お前は笑ってろ。」


「・・・・・・・・・はい。」


 主人からの命令。


 部下は逆らえるはずもなかった。


「わかればいいよ。」


 言うと、死神ミクは、ビルの縁に足をかける。


 そして・・・。


「あばよ、ミリト。」


「さようなら、ミク様。」


 前世の名前で呼び合う。


 それが別れの言葉。


 そして、死神の足がフワリと宙に浮いたかと思うと、空高く舞い上がる。


 ・・・・・・・・・さようなら、ミク様。


 そして、利徒は青空を見るのをやめ、ビルを降りていくのであった。


 しかし・・・・・・・・。


「あ・・・ごめんごめん。言うの忘れてたけど、どこかで泊まれる場所知らない?私、今月の成績悪くて、戻ると魔王様に怒られちゃうんだ。」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おまえはぁああああ!!」


 おしまい。