利徒の目の前には空しかなかった。


 ただ、ただ、大きな青空を眺めていた。


 維持費が保てず、目新しいテナントも入ってこない、廃墟とされた立ち入り禁止のビルの屋上。


 利徒のお気に入りの場所。


 そんなところで仰向けになりながら、利徒はひたすら空を見上げながら、不意につぶやいた。


「あ~・・・死にてぇ~。」


 それは、人間ならば、誰しもが思う一瞬の気の迷い。


 しかし・・・。


「その願い、私がかなえてあげましょう!」


 どこからか、返事が返ってきた。


「え?」


 聞き覚えのない女性の声。


 顔を上げて、周りを見渡すと、見知らぬ女性がいた。


 漆黒のローブに、顔半分だけを覆いつくすドクロのお面。


 右手に持っているのは、巨大な大鎌。


 ・・・・・・どうこからどう見ても、死神だった。


「あなたは?」


「死神です!」


 見事に死神だった。


 ・・・・・・・うん


「春だしな・・・。」


 こんな日もあるよね・・・。


 思った瞬間。


「チェースト!!」


 突然、鎌が振り下ろされた。