「しょうがないよ。今に始まったことではないし・・・それに、元々宿無しの自由な商売人。逃げるついでに、次の村にでも行って、水を売らないと。」


 立っているのもつらいけれど、コノ村にとどまるわけには行かない。


 正体がばれた。


 追っ手も来るだろう。


 あんなヘッポコ騎士ではなくて、本格的な剣士や魔法使いが攻めてきたら、さすがにスイも太刀打ちできない。


 逃亡生活は今に始まったことではないが、スイにはそれ以外の生活は許されていなかった。


 商売道具のかばんを持ち上げ、遠くを眺める。


 とりあえず・・・・・西に向かってみるか・・・・。


 もしかしたら『海』なんていう、でっかい水溜りも見れるかも知れないし・・・。


「ねぇ、また会えるかな?」


 ミクの言葉。


 別れの言葉。


「まぁ、生きていれば会えるだろうさ。」


 そう、生きていれば再会の可能性はどこまでもある。


 今生の別れなんてどこにもない。


 水が、火が、風が、土が、きっと俺たちの願いをかなえてくれる。


 神の恩恵を忘れず、生きていることを感謝せよ。


 北の民・・・そして火の民に古来より伝わる伝承。


 だから、願えばまた俺たちは再会できる。


「そっか・・・それじゃあ、またねだね。」


 ミクが笑う。


 ミクが笑ったからスイも笑った。


「あぁ、またねだな。」


 こうして旅人は再び旅に出る。


 水を持ち、新しい国へと向かい・・・。