「・・・・・・・・・・・・猫は虎神には渡さない。それがこちらの条件だ。」


 ・・・・・・・・とりあえず、そこだけは譲らない。


 譲れないのだ・・・。


『そんなことがいえる立場とでも?』


「娘一人のために、世界の命運をかけられるか?」


『・・・・・・いいでしょう、エルシャンクは虎神には渡しません。ですが、現状であなたたちに渡すわけにも行かない。今回の交渉材料は、あくまでアナタの娘だ。』


「・・・・いいだろう。見張りは明日の朝には解こう。それで、娘の受け渡し場所は?」


『我々の家・・・それが一番では?』


「分かった。」


 予想外な・・・いや、相手が小悪党なら十分に考えられた事態か・・・。


 菜々を人質に使うとはな・・・。


 こんな事態を避けるために、今までありとあらゆる情報網から菜々と自分の関係は消していたはずなのに・・・。


『では、明後日の正午・・・見張りが解除されたことが分かり次第、また連絡します。』


 それだけ口にすると、アルクは電話を切った。


「許せん・・・あいつら・・・絶対に許せん!」


 電話を切った後、怒りで胃が縮こまるのを感じた。


 そして、そのまま内線でオペレーターに電話をつなぐ。