「最後に、これを」





 渡された小さな小瓶には

 カラフルな

 パルテル色のドロップス。





「毎晩1粒ずつ食べてください、このドロップスがなくなる頃、あなたに幸せな未来が訪れますように」





 ウェイターのやさしい笑顔に

 つられて笑う。





「……ありがとう」





 稚奈は小瓶を受け取り

 幸せな気持ちで

 カフェを後にした。










 そして

 信号を渡る前に

 一度だけ、振り返ると





 そこには

 カフェの明かりも何も

 跡形も

 なくなくなっていた。





「……」






 都会の森に突然現れた

 カフェ

『クール・ペルドゥル』





 自分の心のカタチを映したドルチェ。





 もうきっと

 行くことはないだろう。





 ありがとう





 稚奈は

 心の中でもう一度つぶやくと

 もう、振り返らずに

 家までの道を歩き出した。










 FIN