「……コレは?」





「今のあなたの心です」





「……」





「『幸せへの前奏曲-プレリュード-』と言います」





「幸せへの前奏曲-プレリュード-?」





 稚奈は、思わず

 はしばみ色の瞳を見つめた。





「何かを決断し、実行しようとする心は美しい」





 ウェイターの言葉に

 稚奈は急に

 頬が熱くなるのを感じた。





「あ、ありがとう、……また来るわ」





 そう言って見上げる稚奈に

 ウェイターは首を横に振る。




 えっ?




「いいえ、あなたはもうここへは来ません」





「……どうして?」





「この美しいドルチェが心にあるかぎり、カフェ・クールペルドゥルへ来ることはないからです」





「……」