「ん……あれは何だ?」
ふと、本堂で金色に光放つある1つの像に目が止まる。
「あー、あれは千手観音って言うのよ」
「せんじゅ……?」
「そう。千の手に観音って書いて、千手観音」
ちらりと犬塚に目線を送ると、彼女は「あんた、結構有名なのに、そんなことも知らないのね」と小さく妖艶に笑みを浮かべた。
千の手……。ってまさか!
俺は、とんでもないことに気付いてしまったぞ。
この像には、千本の手がついていると言うのか!
「よし、数えてみよう」
「いち、に、さ……「恥ずかしいから止めなさい! ってか、千手だからって千本の手があるんじゃないんだからね、亮介?」
呆気なく、俺のカウントは犬塚に凄まじい勢いで遮られてしまう。

