【完】スマイリー☆症候群




「っ!」


何かに気がついたのか、植木は突然眉毛をピクッと動かした。


「犬塚、その様子じゃ熱でもあるんじゃないか?」

「ね、熱なんてないわよ……」


そのとき、ふと何か嫌な予感がゾクッと俺の脳裏に過ぎる。

ちょ……待て。待つんだ植木! やめろーー!

そんな俺の心の叫びも虚しく、それはそれは、最悪の事態に発展してしまったのであった。

そして1秒後、彼女の額に触れた植木の手の平。

近付く顔と顔。


「……っぎゃあああああ!」


――パチンッ。


次の瞬間、悲鳴と共に鳴り響いたのは、風船が割れたときのように大きく、それでもってとてつもなく甲高い音。

反射的に目を閉じてしまっていた俺は、恐る恐る瞳を開いた。

……瞬時に目に映るのは、悲惨な光景。


「植木、お前……」


不意にも、そのとき俺は、今一番思ってはいけねーことを思ってしまったのだ。

何故かこんなときに限って段々と湧き上がる、“どうしても言いたい”という馬鹿な気持ち。

まさか俺が、その意志を抑えられる筈もなく――。


「……林檎みてぇ」


気付いたときにはもう、口から溢れ落ちてしまっていた。