「っ!」
何かに気がついたのか、植木は突然眉毛をピクッと動かした。
「犬塚、その様子じゃ熱でもあるんじゃないか?」
「ね、熱なんてないわよ……」
そのとき、ふと何か嫌な予感がゾクッと俺の脳裏に過ぎる。
ちょ……待て。待つんだ植木! やめろーー!
そんな俺の心の叫びも虚しく、それはそれは、最悪の事態に発展してしまったのであった。
そして1秒後、彼女の額に触れた植木の手の平。
近付く顔と顔。
「……っぎゃあああああ!」
――パチンッ。
次の瞬間、悲鳴と共に鳴り響いたのは、風船が割れたときのように大きく、それでもってとてつもなく甲高い音。
反射的に目を閉じてしまっていた俺は、恐る恐る瞳を開いた。
……瞬時に目に映るのは、悲惨な光景。
「植木、お前……」
不意にも、そのとき俺は、今一番思ってはいけねーことを思ってしまったのだ。
何故かこんなときに限って段々と湧き上がる、“どうしても言いたい”という馬鹿な気持ち。
まさか俺が、その意志を抑えられる筈もなく――。
「……林檎みてぇ」
気付いたときにはもう、口から溢れ落ちてしまっていた。

