【完】スマイリー☆症候群




「じゃあ、撮るから。真ん中よってな」


そう呟く杉崎さんは、気を取り直してカメラを構え直す。

ドキドキドキ。

再び到来したチャンス。

今度こそ!

15センチ……10センチ……5センチ……1センチ――

彼女との距離を計る俺は、「ハイチーズ」と言う杉崎さんの合図なんて既に聞こえてなくて、ただ姫に近付くということだけに、全神経を集中させる。

そして少しずつ距離を縮め、

ゴクリ……。

あともう少し。

清水孝治、行っきまーす!


――ポンッ。


三度目の正直。

そっと俺に抱き寄せられた彼女は、「あっ」と愛らしい声を漏らした。

ふわりと揺れる、栗色の髪から優しく漂う甘い苺の香。
まるでマシュマロのように、柔らかくてきめ細やかな肌。

白い頬がほんのり桃色に色付き、ぱっちりとした二重の大きな瞳は、一瞬俺をチラリと覗く。

ドキドキと加速する心臓は、壊れてしまいそうな程速く脈を打つ。

嗚呼神様、前言撤回です。俺、やっぱり罪を犯してしまいました。

こんな幸せなことを、独り占めしてしまって良いのでしょうか?