「まさか清水が、自分を忘れてしまうとは……」
やっぱりーー! コイツ絶対勘違いしてやがんよ。
お前ぇの思考回路、どうなってんのぉぉぉ!?
「よし、まず名前からだな……。いいか、お前の名前は清水孝治っていうんだぞ」
はいそうです。俺、清水孝治ですけど。普通に知ってますけど。
「いや、あのさ……植木」
「何っ! 俺のことがわかるのか、清水! 少し記憶を取り戻したんだな」
キラキラと眩しく輝く瞳を俺に向ける彼。
「言っとくけど俺、記憶喪失じゃないんだけど」
「そ、そんな……」
暫く続く沈黙。まるで時が止まったかのように静かになる室内に響く、時計の秒針。
俯いた顔を勢い良くパッと上げた植木は、鋭く前を見る。
「そうだったのか、すまない。またまた勘違いしていたようだ」
何回勘違いしてんだ、おい!
呆れて物も言えない。そんな言葉がピッタリだ。
まあ、そんな天然なところが、コイツの良い所の1つなんだけどな。
「2人共、そろそろ行くぞ。準備出来たか」
「あ、はい!」
「大丈夫です」
植木の2度目の勘違い騒動も終わり、既に着付けも完了していた俺達は、元来た場所に戻ることにした。

