「ここからは、こちらの秋山はんと杉崎はんが手伝ってくれはるさかい、2人ともよろしゅうな」
ぺこりと丁寧に頭を下げる舞妓さん。彼女の示す手の先に見えるのは、どう見ても男の人。
彼女の言う、“秋山はん”と“杉崎はん”とはその2人のことだろう。
いや、まさかな。
額を濡らす、じわじわと湧き出てきた数滴の汗。
嫌な予感が脳裏に過り、恐る恐る口を開く。
「あのー……舞妓さんは?」
「……ウチは失礼させてもらいます」
申し訳なさそうに眉を垂らし、再びふんわりとお辞儀してみせる彼女。
それから小さく微笑み、名残惜しくも俺達の前から姿を消した。
そんな、そんな、そんなぁーー!
舞妓さん……聞いてないぜ。
「植木くんと清水くん……やったな。早速やけど、今から着付け始めるさかい、中に入ってもらえるやろか」
スッと扉を開ける右側にいた男性。胸元で綺麗に輝く銀色のネームプレートに書かれた文字から、その人が秋山さんだということがすぐにわかる。
「了解です」
「は、はい……」
明るい植木の返事とは違い、少しどんよりとした空気を醸し出す俺の小さな返事。
「どうぞ」と室内に手に促され、俺達はその部屋に入っていった。

