【完】スマイリー☆症候群




「ここからは、こちらの秋山はんと杉崎はんが手伝ってくれはるさかい、2人ともよろしゅうな」


ぺこりと丁寧に頭を下げる舞妓さん。彼女の示す手の先に見えるのは、どう見ても男の人。

彼女の言う、“秋山はん”と“杉崎はん”とはその2人のことだろう。

いや、まさかな。

額を濡らす、じわじわと湧き出てきた数滴の汗。

嫌な予感が脳裏に過り、恐る恐る口を開く。


「あのー……舞妓さんは?」

「……ウチは失礼させてもらいます」


申し訳なさそうに眉を垂らし、再びふんわりとお辞儀してみせる彼女。

それから小さく微笑み、名残惜しくも俺達の前から姿を消した。

そんな、そんな、そんなぁーー!

舞妓さん……聞いてないぜ。


「植木くんと清水くん……やったな。早速やけど、今から着付け始めるさかい、中に入ってもらえるやろか」


スッと扉を開ける右側にいた男性。胸元で綺麗に輝く銀色のネームプレートに書かれた文字から、その人が秋山さんだということがすぐにわかる。


「了解です」

「は、はい……」


明るい植木の返事とは違い、少しどんよりとした空気を醸し出す俺の小さな返事。

「どうぞ」と室内に手に促され、俺達はその部屋に入っていった。