【完】スマイリー☆症候群




「えーっと、確かこの辺りだった筈……」

「あっ! あの赤い看板のある店じゃない?」


俺達3人は、一斉に宮永の指差した方向に振り向いた。

その瞬間、俺の瞳に真っ先に飛び込んできたのはそう、看板にでかでかと書かれた“楽園”の2文字。

白地の看板に、黒で“京の楽園”と書かれてあり、それが店の名前なんだと理解する。

京の楽園とか、楽園とか楽園とか楽園とかぁーっ! めちゃくちゃ堪んねーじゃんかよ。

妄想がますます膨らんで、頭ん中がおかしくなりそう。

嗚呼、マジで鼻血でそうなんですけど。


「フフフッ……フ。おら、早く入るぞ」

「し、清水くん、鼻息……」

「うおっ」


おっと、いけねぇ。

無意識の内に鼻から飛び出していた、蒸気機関車並に勢いのある鼻息。

このままじゃ俺の本性がバレ兼ねないので、一旦込み上げる気持ちを抑えることにした。


――チリン。


期待を胸いっぱいに込めて扉を開くと――。

そこには、想像以上の絶景が広がっていた。


「あら、おいでやす〜」


ドクン。

いきなり登場した、舞妓さんによる京都弁。

それを聞いた直後、俺の心は今までにないくらい、キュンと弾ける。

煩い心臓。

自然と上がる口角。

溢れんばかりの幸福感。

……もしかして、これが本物の萌えというものなのか!?