「えーっと、確かこの辺りだった筈……」
「あっ! あの赤い看板のある店じゃない?」
俺達3人は、一斉に宮永の指差した方向に振り向いた。
その瞬間、俺の瞳に真っ先に飛び込んできたのはそう、看板にでかでかと書かれた“楽園”の2文字。
白地の看板に、黒で“京の楽園”と書かれてあり、それが店の名前なんだと理解する。
京の楽園とか、楽園とか楽園とか楽園とかぁーっ! めちゃくちゃ堪んねーじゃんかよ。
妄想がますます膨らんで、頭ん中がおかしくなりそう。
嗚呼、マジで鼻血でそうなんですけど。
「フフフッ……フ。おら、早く入るぞ」
「し、清水くん、鼻息……」
「うおっ」
おっと、いけねぇ。
無意識の内に鼻から飛び出していた、蒸気機関車並に勢いのある鼻息。
このままじゃ俺の本性がバレ兼ねないので、一旦込み上げる気持ちを抑えることにした。
――チリン。
期待を胸いっぱいに込めて扉を開くと――。
そこには、想像以上の絶景が広がっていた。
「あら、おいでやす〜」
ドクン。
いきなり登場した、舞妓さんによる京都弁。
それを聞いた直後、俺の心は今までにないくらい、キュンと弾ける。
煩い心臓。
自然と上がる口角。
溢れんばかりの幸福感。
……もしかして、これが本物の萌えというものなのか!?

