「清水、貴様俯いてどうした」


何故か下を向いて黙ったままの清水が、気になって仕方ない。


「……清水? 具合が悪いのか」


何度尋ねても返事がない。

これは、本当にマズイ事態に陥ったのでは。そんな考えが頭を過った時だった。


「植木……。何だこの胸の奥の高鳴りは! 実に嬉しすぎるぞ!」


今まで沈黙していた清水は、それを思わせないかのように強く箱を胸に抱き、ニヤニヤと顔を緩める。

それから、奴は雄叫びを上げると、暫くの間グランド中をはしゃぎまわった。


――……


かじかんだ指を、そっと擦り合わせる。

長時間冬の風にさらされた身体は、冷たく冷えきっていた。

しかし、何故か心はじんわりと温かくて。それは、心を包むような、そんな優しい温もりだった。


「そろそろ帰るか」


決戦のあった大地で。

夕日のオレンジに包まれながら。


「じゃーな。植木」

「ああ、また明日」


激闘だったこの日は、遂に終わりを迎えたのだ。