「皆、そろそろ始めていいか?」
「私はいいですよ、あっちゃん」
“あっちゃん”
小林をそう呼ぶのは、彼の右隣に座っている少女、前原鈴(マエハラ リン)唯一彼女だけだ。
彼女はクラスの副委員長をつとめ、学年で1、2を争うほどの成績優秀。
更には、大和撫子でおっとりとした和風美人と、秘かに人気を集めている美少女だ。
「俺もいいぜ、あっちゃん」
「あたしもよ、あっちゃん」
ニヤニヤしながら言う俺に続き、浅野が同じように言う。これが俗に言う“小林いじり”だ。
ま、これはまだ、序の口程度だけれど。
そして案の定、小林は真っ赤な顔をして肩を震わせる。
「お前等……いい加減にしろーー!」
その照れと怒りが入り交じった声は、旧校舎の奥まで響き渡った。

