「……そろそろ席に戻ろっか?」
「そうね」
顔を見合わすと、私達は深く溜息をついた。
武藤先生の明らかなキャラの変貌っぷり。それから、柳葉先生に対するあの態度。
それを間近に目にした私達は、本人よりも逸早く『白鳥失恋物語』を悟ってしまったんだ。
――キーンコーンカーンコーン。
「チャイム鳴ったぞー! さっさと席に着け〜」
「……ねぇ、笑佳。何か今日の先生、すっごく楽しそうじゃない?」
席に着くと、突然声が聞こえ前を向く。
「そ、そうだね。何か良いことでもあったのかな? はは……」
只今淡い恋心を抱いている白取先生は、いつになく笑顔全開で教卓の前に立っている。
そんなことだなんて一切知るよしもない薫ちゃんに、私はあやふやな返事を返した。

