ボクの得意はお菓子作り。

ボクのうちはケーキ屋さんだから、小さい頃からボク自身作ってきた。

かわいらしい赤い屋根と白い壁の小さなケーキ屋さん。

甘い匂いに囲まれた生活は、その香りほど甘くはなかったけど。

それでもボクは密かに。

パティシエになれたらいいなという夢を持っていた。


「チョコ作りってめんどーなんだねぇ」


木べらで一生懸命、チョコを溶かす雲母ちゃんから思わず漏れるため息に。

ボクは苦笑しかできない。


「お菓子はどれもめんどくさいよ」


でも、雲母ちゃんは手を抜くようなことはない。

それだけ。

好きな相手なんだろうな。

そう思うだけで、胸が激しく動悸して、息苦しくなる。


空手有段者の雲母ちゃん。

足の速い、運動神経抜群の雲母ちゃん。

サバサバして。

人にはっきりモノを言える雲母ちゃん。

弱いものを見てると守りたくなると言った雲母ちゃん。


全部、全部。


雲母ちゃんはボクと違って男らしい。