俺は今、新たな一歩を踏み出そうとしている。
これは果たして正しき選択であったと……、

信じるしかない!



「お待ちしておりました」

え?!
まだチャイムも鳴らしていないのに門が開いた。

慌ててしまう自分が田舎者かもと思いつつも、思わず周囲を見回してしまう。
門の上に防犯カメラが作動していることを確認し、少しだけ安心している自分がいたり。


大きな門をくぐりそのまままっすぐ進むと、玄関が見えてきた。

やっと梨里華嬢とのご対面だせ!

「ようこそ、我が宝城家へ。黒鉄千夜子様──ですよね?」

「あ、はい」

「面接でお会いした時となんとなく雰囲気が違うような」

まずい!

「そんなわけないじゃないですか。いやですわ、オホホホ……」

いい考えが思い浮かばねぇよ〜こうなったら笑ってごまかす!これっきゃねぇ!!

「……まぁ、いいですわ。私はここの支配人たちを取り仕切っている、真壁妙子(まかべたえこ)と申します。あなたには──そうね、まずここの掃除を覚えてもらいます」



へっ!?



俺たち作戦は甘かったのかもしれない……。

「掃除……ですか?」

「何か不服でも」

目の前に立ちはだかる彼女の威圧感。

「……いえ。分かりました」

俺は情けないと思いつつも、この無言の圧力に逆らうことができなかったのだった。