「で、そのターゲットは?」

「宝城家のお嬢様」

なっな、何っ〜〜〜っ!!

確か、宝城梨里華(ほうじょうりりか)、二十歳……。
日本でも有名な財閥の一人娘!

受け止めたくないが、現実である。
そしてこれが現実である以上、俺は彼女を攻略する術を見つけなければならないのである。



「まだ予告状は出してないんだよな」

「……出したよ」

マジかよ!つーか勝手にだなぁ!!

「なんか文句でもある?」

どうやら俺の思っていることは彼女に通じてしまったらしい。

「……い、いえ」

実の妹の言いなりになっている俺はまだまだ弱いと改めて感じた。

「まぁ、安心していいわよ。あ〜んな大きなお城にいきなり忍び込めなんて言わないから」

「?」

「とーぜん!まずは敵の手のうち調べる!これぞ怪盗の鉄則!」

さすが我が妹!ちゃんと分かっているではないかぁ〜っ!!


……て、


「なんだよ!これ!新しいコスプレか!!」

千夜が俺に差し出してきたもの……カツラ?

「お屋敷と言えば『メイド』!これぞ鉄板!ナイスアイディア!」

「ばかヤロウ!俺は男だ!こんなヒラヒラしてるもんはけるかっ!」

それに『メイド』以外にもあるだろ!『執事』とか!

「でもね、リリカ嬢って男嫌いらしくて屋敷中の使用人は女性しかいないんだって」

「なに〜ぃっ!!つーことは……」

「女装するしかないわね!お兄ちゃん!しかも犯行予告は三日後の午前0時だから!よろしく〜!」

俺はメイド服を片手に完全に脱帽していた。