「お兄ちゃん!もう!お兄ちゃんてばぁ〜!」

「……」

俺は千夜子から貰ったチョコレートを手にしたまま、無意識のうちに考え込んでいたようだ。

「さっきから黙り込んじゃって、どうしたの?」

「ちょっと考え事」

柄にもない……ってか。彼女の顔が今にもそう言いたそうな顔をしている。

「ふ〜ん……」

「そーいやさ、次のターゲットは決まっているのか?」

情報収集は彼女の役目。
俺はどっちかってと実践派なんでな。

「決まっていると言えば決まっているし……いないと言えばそうかもしれない」

なんだよ、その曖昧な発言は〜っ!

「どう言う意味だ?」

「今回のターゲットがね、指輪なの」

「な〜んだ、別にいつもと変わらねぇじゃん」

絵画だろうが指輪だろうが、壷だろうが……ターゲットであれば俺は手に入れるまでよ。

「だからね、そ〜じゃなくてぇ」

「?」

「指輪の持ち主ごと盗まないとならないわけっ!」

ってことは、つまり──、

「指輪が指にはまっている……」

「そういうことっ」