俺は昔から『バレンタインデー』が嫌いだった。

その理由は誰が見ても明らかだと思う。
しかしこの名前のせいでからかわれようが、名付けたじいちゃんを嫌いになったり、恨んだりしたことはない。
ただ文句は言ったことはあった。

一度だけ……。

『なんでこんな名前付けたんだよ!じいちゃん!』

『澪斗はこの名前が嫌いか?』

『あったり前だろ!学校でばかにされる俺たちの身にもなって……』

その時のじいちゃんの顔が忘れられなかった──。


『儂もそろそろ引退せねばならん。身体が思うように動かないんだ。お前たちにはいつか、儂が届かなかった願いを叶えてほしいと思ってな』


……願い?


今でもその意味が分からないでいる。

父さんはじいちゃんと仲が悪く、この探偵という家業は継ぐことを拒んだ。
そればかりか、じいちゃんの集めていたコレクションを闇で売りさばいてしまった。そして揚げ句の果てには、その金で政治家になったのだ。


だから今、亡くなったじいちゃんの夢を叶えるべく……、

俺はこの仕事をすることを選んだ。

再び、じいちゃんのコレクションを集めること。
そして……、
『願い』を突き止めること──。