「さっきの警察ですけど……いいんですか?あんな扱いして」

「い──のよ、自分の身くらい自分で守ってみせるわ!それに……」

「?」
ふと見せる悲しげな表情。
そのしぐさに俺は心が動かされる。

「いっそのこと、指輪ごと私もことを連れ去ってくれたら……な〜ぁんてね」

「梨里華様は怖くないのですか?」

俺の問い掛けに彼女は軽く首を横に振った。

「……私ね、生まれてからずっとこの屋敷にいるの。家庭教師がいるから学校にも行ったこともない──だから外の世界を見て見たいの」

「そう、ですか。その願いすぐに叶いますよ」

「……怪盗バレン。上手くいくといいんだけど」

彼女は右手の薬指にはまっている指輪の上に左手の掌をそっと被せ、そして強く握りしめた。

「大丈夫!狙った獲物は絶対に逃がさない!怪盗バインにお任せあれ!」


……って!ま、まずい。
これじゃあ俺がバレンだと言っているみたいじゃないかなぁぁ〜っ!!


「?」

「いや──あの、これはそんな深い意味はなくて。えっと……つまり俺、じゃなくて私も梨里華様の味方ということなのであります」


「……ありがとう」


なんとかごまかせたのかな。
そういうことにしておこう。