「ねーねー」
「……」
「何で無視い?」
「……」
「れーみーち…」
「嫌。」
「お願い!一生のお願い!コレ手伝って!」
(一生のお願いってアレだよネ一生のうちで10回は言うよね〜
そう言って青空が差し出したのは数学のノート。
「自分でやれ。」
伶美は椅子から下ろした片足で床を蹴り、くるりと背を向けた。
「分かるんだからいいじゃんー」
「俺は理解なんかしてない。記憶してるだけだ。」
「記憶?
―いや、でもあの時はさ、間違ってるって言ってたでしょ?
計算間違ってるって。
だったらやっぱ理解して…」
伶美が椅子からすっと立った。
「怒らせた?怒らせた?また怒らせた?」で、
頭がいっぱいの青空はとりあえず口を閉じる。
「座れ。」
青空は小さくなりながら椅子に腰かけた。
「黙ってやれ。しゃべるな。」
青空が目で反論するが、無視。
またやってきた沈黙タイム。
ピンと張ってしまった空気。
…カチッカチッカチッ……
時計の針の音だけが自由に話し始めた。
青空はこの状況を抜け出す方法を考える。
なにも思いつかない頭を左右に振って、笑顔を作り、伶美の方を向く。
「ちゃんとやるからさー話してちゃだめ?」
返事が来ない。
青空は伶美のいないほうの壁を向き、
声を出さずに叫んだ。
「もーやだーー!」


