「。。。」


伶美は鏡の前に立っていた。

何をしているのかは、よく分からない。




翼は、青空が起きる時刻の1時間前に戻って来た。

青空が壊れてないか、「心配」していたのだ。


だが、

不審な行動をとったまま動かない伶美を窓越しに見つけ、

入っていっていいのか迷い続けている。

ほんの少し、いや、だいぶ遠くの雲の中で。

近付けば分かるかもしれないが、

これ以上近づくと伶美に気づかれる。


「うーん……」


いくら唸っても返事はこない。






「おは…よ…?…」

なんだろうこれは。

何があったんだろうこれは。

この

伶美の表情は。



青空の中で、

同じ疑問がでてきては消えて行く。

ベッドに腰掛け青空の方に向けた伶美の顔。



目が少しも笑ってない笑顔。

口元だけの自然な笑顔。


普通の笑顔なら良いというわけではない。


・・
伶美が笑っている。


ということが異常事態なのだ。


「具合、悪い…の?…かな。」

その瞬間、伶美の口元が一の字になる。

「何故そうなる。」

「あ…いや…ごめん。うん。何でもないっ」

さっと布団をはいで、ぴょんとベッドをおりる。

せかせかとタンスから制服を取り出し、着替えはじめた。