ずっとこのままでいるのかと思うほど

長い時間同じ態勢でいた。

突然、青空が顔をあげ、

「カズ君てね、向かいの家の子なの。」

伶美は何も言わなかったが

黒い瞳は青空のほうに動いた。

「カズ君はね、

私が8歳の時生まれたの。

よく見に行ってた。

すごく可愛かったから。

3歳ぐらいからはときどき遊んでた。

そういえば

『こんにちは』って言うと

バイバイしか言ってくれなくて。

私が髪短く切ってた時は

『おにーちゃん』て呼んでたりしてた。」


少しだけ、青空の口元がほころぶ。


「足がすっごく速くて、

かけっこでは絶対1番だった。

泥んこ遊びばっかりして

いつもお母さんに怒られてた。」


少しだけ青空の顔が暗くなった。


「弟みたいだったよ。

カズ君は。


1年生になる時

黒いランドセル買ってもらって

嬉しそうに見せに来たんだ。」


また少し、青空の顔が暗くなった。


「カズ君は今、何してるのかな?


……授業中…かな。

明日は、何してるのかな


また


学校行ってたんだよね。

明日が……

あったんだよね。

カズ君には」


青空の声が震えだした。