伶美の方を翼が見た。

「よく、解らないんだけど。」

「……今日の朝…」

伶美は朝のことを話した。

翼は黙って聞いていた。




「青空の代わりにはねられたのが

たぶん、今の……」

感情を知らないはずの伶美が

苦しそうに言葉を切った。

少し後に、

立ち尽くす翼の耳を

階段を上る音がかすめていった。







伶美は膝を抱えて座り込み、

その腕の中に顔を埋める

青空の隣に座った。

同じように形のない痛みを感じることができても、

人間がどんな言葉をかけられたら

楽になれるのかは分からなかった。