校門を出てすぐの角を曲がると、

彼女は歩くのをやめた。

「何をすればいいわけ?」

青空が尋ねると、急に抱き着かれた。

「だっ…な、何?!」

「目を閉じて、自分の家を思い浮かべろ。」

「いえ??…家?家…」

言われたとおり、目を閉じる青空。

しばらくの間、何も聞こえなくなった。




少女の腕がするりと落ちた。

「目、開けてもいい?」

「……いい…」

青空はゆっくりと目を開けた。

「…あれ?」

家の前についてるんだろうと思っていたのに、

さっきと変わらない風景が広がっているだけだった。

「今、何しようと…」

青空は少女の姿を探した。

「え…」

彼女は肩で息をしながら、座り込んでいた。

「何?!どーしたの?大丈夫…?」

「…よるな」

震えた声で強く、そう言った。


「移動はできない…らしいな。」

すっと立ち上がり、しっかりとした足どりで歩きだした。

「さっさとついて来い。」

青空は彼女のほうを見ずに、言った。

「体、大丈夫?何かあった?」

「何もない。何もなかった。」




青空は見ていて苦しかった。

『もういい』と、言いたかった。



彼女は、青空に見えてないつもりで

左腕を右手できつく握りしめていた。

右足も、かすかに引きずっている。



もう、いいよ――

青空は小さく唇を噛んだ。