「何が!?」

「何でもない。」

「な……」

「チッ」

完璧に『怒ってる』顔での舌打ちは、一回で青空を黙らせた。

「ごめんなさーい」

苦笑いのふざけた謝罪は、

場の空気を凍りつかせてしまったらしい。

殺気に満ちる保健室。

「寝てろ」

青空は小さく頷いて布団にもぐった。






からから…

乾いた音で開くドア。


コツ――


静かな廊下にするりと出る黒い影

「っ……」

倒れ込む黒い影。


ポタっ


真っ赤な血の滴が落ちた。

肩で息をする彼女は背中の破片に意識を集中させた。

「くっ…ぅ…」

壊れろ、破片の奥深くに命令する。

普通なら耐えられない痛みがしばらく続き、

傷がとじた。

あいつみたいに上手く出来なかったが、

破片と傷の処理は終わった。

体を起こした彼女は、壁に寄り掛かった。

「はぁ…」

何故、と、自分の記憶に尋ねていた。

意思を持っているかのように、

青空に襲い掛かった硝子。

普通ならかかるだけだった。

何故――

汗を拭って重い体で立ち上がり、

からからから…

何もなかった顔で保健室に戻った。