少女が住むのは華やかな世界。


周りにあるのは花や、花。

少女には真っ白な、鳥のような翼があった。



少女はこの翼が大好きだった。




「今日はどこに行くのですか?」

空気を震わす穏やかな声。

「今日?『うみ』に行きたいな」


「そこへは絶対に行っては行けないと、毎日言っているでしょう。」



絶対に行っては行けない――



それは天での掟の一つ。


「どうして行っては行けないの?」


白い翼はいつも答えない。


「理由くらい言ってくれてもいいじゃない」

白い翼は何も答えない。



少女は金の髪によく似合う、

青い大きな瞳で白い翼の

顔をじっと見つめた。



白い翼は視線を下に落とし、

「…行ってみますか?」

「いいの?」



白い翼は笑顔を向けて

かすかな声でつぶやく―




「ええ…あなたが

『行く』

とおっしゃったのですから」




一瞬凍りついた空気


「何?」

「いいえ。では行きましょう。」



バサッ



白い翼を広げ 羽ばたく。


風に舞いあがる花びら――




白い翼は楽しくて仕方がなかった。

少女もその時を楽しんでいた。

無知すぎるがゆえに――



その時



その姿



それはまるで餌を運ぶ白いカラス