彼女が住むのは真っ暗な世界。


黒い海に、黒い空。


彼女には真っ暗な、コウモリのような翼があった。


その黒い翼はいつも不機嫌だった。




―ああああぁぁぁ!!―




黒い翼はこの声が嫌いだった。





バシャアッザブッ バシャッ





彼女は必死に走った。

黒い海の中を、真っ黒な水しぶきをあげて。



パシャッ



彼女がつかんだのは、また、水だった。


彼女の頬を、黒い髪からの黒い雫とともに、涙が伝う

黒い翼は泣いている彼女が嫌いだった。



理由は――





分からなかった。