見上げる空は青いはずなのに
オレの目には灰色に見える。
感じないのは熱だけではなくて
色も味も匂いも
なにもかもが暗く沈んでいる。
彼女がいたときは
すべてが鮮やかで美しく
なにもかもが愛しかったはずなのに。
彼女が消えた途端
それが泡のように弾けて消えた。
生きている。
それでも生きている自分。
生きているのに死んでいる自分。
こんなオレでいいのかと――
そう聞きたい相手はもう隣にいない。
波の音が聞こえる。
潮の匂いが鼻先を掠めて行く。
風が髪をさらい
黒いネクタイを撫でて行く。
広がるのは途方もなく腕を伸ばした海。
灰色の空に
灰色の海。
寄せる波も砂も
全てがグレー。



