「笑顔の禅ちゃんがここに来てくれるのを、オレ、ずっと待ってるからね」
大丈夫だと……背中を押されたような気がした。
オレは黙ったまま、頷くことも何もせず。
ただ、そっと襖を開けた。
扉は開かれた。
心の扉は、ほんの少しではあるけれど。
それでも頑なに閉ざされていたはずの扉は、今やっと……開かれたのだ。
「杉谷……樹里……か」
アキに似た子。
でもアキではない子。
彼女が自分をどう思い、自分が彼女をどう思うかはこれからだ。
ただ、彼女を知りたい。
今はその気持ちに素直になってみようと思う。
「お邪魔しました」
小さく一礼し、オレは彼女の家を後にした。
広がる闇色の空。
けれどそこには星たちが煌めいて――
ぼんやりと空を見上げながら、オレは明日が早く来ないかと……そんなことを考えていた。



