「拓実は……強いんだな」
しなやかに、新緑の枝のようにしなやかに伸びやかに、彼は笑う。
それが少し羨ましくて、思わず言葉が漏れてしまった。
何度、強くなりたいと願っただろう。
何度、強くありたいと思っただろう。
けれど、自分はアキという心の支えをなくし、根元から崩れてしまった。
「オレは……オレを必要としてくれる人がいるからなんだと思う。
禅ちゃんは……いや、禅ちゃんもそういう人を見つけなくちゃダメだと思う。
ねーちゃん以外の……誰かをさ」
必要としてくれる相手。
パッと頭の中に浮かんだ顔があった。
その顔に、オレは首を振った。
ダメだと思う半面で……けれど手を伸ばしたくなって仕方ない相手。
「大丈夫。ねーちゃんも許してくれるよ」
拓実の言葉に、オレは胸の奥がズキリと痛んだ。
痛んだ後、そこはジクジクと小さな疼きのようになる。
望んだ言葉だったのだと。
その言葉を聞いて思った。
彼女に――アキにそう言ってもらいたくて。
『いいよ、ゼン』
そう、たった一言。
そう言って貰いたかったんだと……



