「もう3年だよ」
拓実はそう言ってオレではなく、オレの後ろの彼女の写真を見つめた。
「3年経ったんだよ」
拓実の声がオレの心の奥底の何かを突くように感じられる。
でも、オレは首を振る。
「3年しか経ってないんだ」
そう。
たった3年。
彼女が亡くなってまだ3年しか経っていない。
オレにはもっと、遥かに長い時間が経っているように感じられるのに、まだ3年なのだ。
「禅ちゃん。
オレはもういいと思う」
拓実は遺影からオレに視線を向けた。
「3年も想っていてくれたら、姉ちゃんももういいって言うと思うよ」
拓実の言葉にオレは強烈な痛みを覚えた。
違う!!
違う!!
違うんだよ、拓実!!
そう叫びたいのに、オレはそう叫べずにただ拓実を見つめ返すことしかできなかった。
「禅ちゃんは生きてるんだから」
『生きている』
確かにそうだ。
でも、生きているのは身体だけで、心は彼女とともに『死んでいる』。



