もしも彼女がその言葉をオレに言わなかったら。
オレは間違いなく彼女の後を追っていたと思う。
実際に言われても、オレは彼女の後を追おうとしていたくらいだった。
止まったのは彼女の無念の想いを
誰よりオレが、オレ自身が分かっていたからだ。
『ゼンの隣で……おばあちゃんになりたかった』
そう言って笑って泣いた彼女の顔は今でも忘れられない。
忘れるどころか年を重ねるごとに鮮やかになる。
一つ、また一つ。
彼女との年が離れていくたびに、胸がキリキリと絞め上げられるような悲鳴をあげていた。
生きたいと願っても許されなかった彼女の命。
その人生。
魂。
オレに出来るのは、彼女の想いを叶えることだけ。
彼女のささやかなただ一つの願いを叶えてやることだけだった。
病気で苦しむ彼女の傍に居ながら
何も出来なかった不甲斐ない自分にできることはそれだけだったから。
「入ってもいい?」
襖が静かに開き、そこから見慣れた顔が飛びこんできた。
短髪の爽やかな笑顔の少年の瞳がオレを捉えている。



