去っていく後姿に
揺れる黒髪に
思い出と影が後を追う。
ズキリと鳴る心の音とともに
ドキンと高鳴る胸の音が重なった。
まだ初日。
けれどこれは大きな一歩。
席に座りなおそうとして
奥に座っていた愛美と目が合った。
複雑な面持ち。
そんな彼女にオレは小さく笑って見せた。
途端、なんとも苦いほほ笑みが返ってくる。
ゆっくりと座りなおし、オレは机に向かった。
心の河に小さな小石が投げられた。
でもその波紋はまだ小さくて……
飲み込まれるように川の奥深くへ沈み
ただ心の河はいつもの冷たさと静けさをすぐに取り戻してしまうだけだった。



