「えっと……あの……」
戸惑う彼女は耳まで真っ赤で、オレは小さく笑ってしまった。
なんというか、くすぐったさが残る彼女のしぐさに、その姿に
心の線が触れて、高い和音を奏でる。
「分かった。
キミの名前は?」
オレは杉谷の隣に立つ威勢のいい女生徒に向き直り、そう尋ねた。
ちらりと見た杉谷はほっとしたようにまた下を向き、胸をなでおろしていた。
「北村奈々です。
っていうか、せんせは樹里のこと、知ってるんですかぁ?」
奈々の上目遣いに苦笑しつつ、オレは杉谷を見た。
杉谷は少し顔を上げ、小さく首を振った。
「ま、それは杉谷本人に聞いてくれ。
同好会の件は考えておくよ。
市川先生にも確認したいから、また改めて返事でいいよな?」
オレの答えに北村は不満顔だったけれど、それでも納得したように頷くとくるりと背を向けた。
「杉谷」
北村の後に続いて出て行こうとする杉谷を呼びとめる。
彼女はびくりと肩を震わせた後、ゆっくりと振り返った。



